9月に出された共同宣言を紹介します。
【アイヌ民族の団結と権利奪還にむけた共同宣言】
よびかけ共同代表 旭川アイヌ協議会
会 長 川村 シンリツ エオリパック アイヌ
共同代表 現住、アイヌ民族の権利を取り戻すウコチャランケの会
代 表 石井 ポンペ
【連絡先 〒070-0825 旭川市北門町11 旭川アイヌ協議会事務局
電話0166-51-2461 FAX0166-52-6518】
クウタリ、クイタクチキ ピリカノヌヤン。
テエタワノ チノミカムイ コツチャタ
クイエルスイヒ エネアニ:
クウタリト゜ラ ウランコパシテアヌワ
シャモルンベオロワ アネイッカプ オピッタ
チャイコホシピレクスネナ
セコル クイェハウタバン
(仲間たち、カムイに誓おう。みんなの力を合わせ、奪われた権利を取り戻すと)
戦争、原発、開発、貧困の拡大など人類も地球も危機を迎えています。私たちアイヌ民族は、日本国家、社会の権力によって民族として生きることを
阻まれ、滅びの道を歩まされてきました。今、私たちはここで立ちどまり、団結し、先人の闘いをひきつぎ、民族の権利を奪い返し、人間として解放さ
れる道を歩むことを宣言します。
日本社会のなかで私たちアイヌ民族は、いかなる権力にも屈せず、生き続けてきた誇りある「先住民族アイヌ」であることを最初に改めて宣言しま す。
★
江戸幕府−松前藩にかわって明治の新政権が成立したのち、日本国家は豊かな大地、山々、河川、海を奪い、生きるための鹿や鮭を捕ることも禁止
し、強制移住などで生活の拠点(コタン)まで破壊しました。大虐殺(ジェノサイド)の猛威が私たちの先祖に幾度も襲い、飢えと餓死に直面しまし
た。さらに民族の習慣や文化まで禁止し、民族の魂でもある言葉(アイヌ語)までも奪いつくそうとしました。日本政府は一貫して同化政策を強制して
きたのです。
アイヌ民族は「旧土人」として差別、侮蔑され、1899年制定の「北海道旧土人保護法」は同化と民族抹殺の法制度として、1997年まで100 年間も存続したのです。
しかし、敬愛する故・山本多助エカシは「どっこいアイヌは生きている」と宣言しました。
★
その間、1930年代の戦争とファシズムの時代になって、北海道大学をはじめ全国の大学の解剖学者・人類学者たちは、アイヌ民族の共同墓地を破
壊して遺骨とともに副葬品も盗掘したり、血液・指紋・掌紋などを採取し、身体を測定して記録し、写真撮影を行い、脳までもホルマリン漬けにし、
「アイヌは劣っている、滅亡の運命にある」などとデッチあげてきました。
戦後になっても、優生・遺伝学、生物学と結びついた人類学は、「優勝劣敗」の民族差別を扇動してきたのです。
そして北海道大学をはじめ東京大学、京都大学、大阪大学などは、遺骨と副葬品も故郷(コタン)に返還していません。先人の海馬沢博さんが北大に
たいして抗議し、北海道ウタリ協会(現、アイヌ協会)との間で納骨堂を建設し、イチャルパを行うことを約束しましたが、肝心の差別的な「アイヌ研
究」は反省も謝罪もなく今日まで続けてきました。
今年3月、北海道大学は『北大医学部アイヌ人骨収蔵経緯に関する調査報告書』を発行しました。しかし医学部の旧第一・第二解剖学教室に調査を限
定し、遺骨、副葬品が明らかに保管されている植物園内の博物館、総合博物館、文学部などはあらかじめ調査から除外しています。さらに重大なことに
「発掘人骨台帳原本」や「フィールド・ノート」は存在しないと述べ、旭川、釧路、門別には本来返還すべきだった遺骨5体が返還されていなかった、
などと書いています。以上からも『北大医学部アイヌ人骨調査報告書』はデタラメで信用などできるものではありません。
盗掘され、研究材料にされた遺骨はアイヌモシリを侵略し、支配してきた日本国家−大学の学者たちの犠牲者で、副葬品はその遺品です。納骨堂の前
に立つと私たちには「はやく故郷、コタンに帰せ」と叫んでいるように聞こえます。
政府(文部科学省)−アイヌ政策推進会議は、全国の大学が奪ってきたアイヌ民族の遺骨を白老に集中し、「慰霊・研究施設」を建設する計画を強力にすすめて
います。これは「慰霊」とともにDNAなどで「研究」するという絶対に許せない施設です。遺骨、アイヌ民族を侮辱するものです。
★
故・萱野茂元国会議員は「アイヌモシリを日本政府に売ったり、貸した覚えはない」とアイヌ民族の気持ちを代弁しています。また、私たちは精神的
なものまですべてを支配することは絶対に不可能であると言い切ることができます。
カムイノミにこめている私たちの精神は、アイヌモシリが母なる大地であることを表しています。私たちの精神の内にアイヌモシリは常に存在してい
ます。私たちの精神、文化、言葉は大地(アイヌモシリ)と一体なのです。
私たちは、「日本は単一民族国家」などの暴言に厳しく抗議し、「北方諸島は日本の固有の領土ではない」と声を高くしてアピールするとともに、何
度も民族の権利回復、民族解放をめざして闘ってきました。だが日本政府は、一切認めず、私たちアイヌ民族を巧みに分断し、立ちはだかり、押さえこ
んできました。
だが世界の先住諸民族は、コロンブスのアメリカ大陸到着、植民地支配以来500年をこえる長期の闘いによって、2007年9月13日「国連先住民族権利宣
言」をかちとりました。この権利宣言は民族自決権、奪われた土地や遺骨・副葬品を取りもどすなどの先住民族権、言語や教育など民族として生きる集
団的権利を認める画期的宣言です。私たちは世界の先住諸民族とともに前進します。
★
今こそ、日本政府にアイヌ民族の権利などを認めさせる新たな闘いのときです。
アイヌ民族の仲間の皆さん!おおきく団結しよう。そしてアイヌ民族が生き、権利が実現する社会をともに創りだそうではありませんか。世界の先住諸民族と連
帯し、さらには琉球民族、在日朝鮮・中国人たちとともに、また理解ある日本人労働者・市民などの協力もえて前進しようではありませんか。
「アイヌ民族法」の制定を目標に、以下に述べる緊急の課題の実現と諸権利の奪還にむけて力をあわせ、団結して奮起することをここに共同で宣言し ます。
一、北海道大学はデタラメな『北大医学部アイヌ人骨収蔵経緯に関する調査報告書』を撤回し、謝罪すること。
一、北大は謝罪と賠償のうえ、遺骨と副葬品を郷土(コタン)に返還すること。
一、北大は謝罪のうえ、人権侵害の身体測定の記録、および写真とフィルムをアイヌ民族に返すこと。
一、北大は、旭川、釧路、門別のアイヌ民族にたいして、返還すべき遺骨を返還していなかったことなどを謝罪し、その真相を明らかにすること。
一、政府(文部科学省)−アイヌ政策推進会議は、全国の大学からアイヌ民族の遺骨を白老に集中させる「慰霊・研究施設」の建設計画を直ちに中止す ること。
一、政府は、アイヌ民族の先住権、民族自決権、集団的諸権利を認めること。
以 上
2013年9月6日
アイヌ民族の団結と権利奪還にむけた共同宣言(賛同者・団体)
よびかけ共同代表 旭川アイヌ協議会
会 長 川村 シンリツ エオリパック アイヌ
共同代表 現住、アイヌ民族の権利を取り戻すウコチャランケの会
代 表 石井 ポンペ
賛同者と賛同団体(2013年9月11日現在)
・アシリ レラ(山道アイヌ学校主宰)
・荒木 繁(札幌在住)
・石原 修(山梨在住)
・伊藤 稔(伊藤ヌプリ、先住アイヌ居住検討委員会事務局長)
・宇梶静江(千葉在住)
・宇梶良子(千葉在住)
・浦川政広(埼玉在住)
・太田奈奈(旭川アイヌ協議会)
・小川隆吉(アイヌ長老会議議長)
・鎌倉圭子(アシリチェップノミ実行委員会委員長)
・萱野志朗(萱野茂二風谷アイヌ資料館館長)
・北川しま子(「北方領土の日」反対!「アイヌ新法」実現!全国実行委員会副代表)
・木幡 寛(NPO法人「アイヌモシリ チノミの会」代表)
・工藤 稠(旭川アイヌ協議会事務局長)
・坂井トモエ(札幌在住)
・島崎直美(チカラニサッタ共同代表)
・杉村恵子(旭川アイヌ協議会)
・杉村フサ(旭川アイヌ協議会)
・杉村芙満郎(旭川アイヌ協議会)
・高橋英子(札幌在住)
・徳田昭子(オンネフチの会)
・豊川重雄(アシリチェップノミ実行委員会顧問)
・藤戸竹喜(彫刻家)
・平田 幸(レラの会)
・山本一昭(「北方領土の日」反対!「アイヌ新法」実現!全国実行委員会代表)
・旭川アイヌ協議会
・現住、アイヌ民族の権利を取り戻すウコチャランケの会
・北大人骨問題の真相を究明する会